熱さと哀愁と ままごと『わたしの星』

2014年、ままごと主宰の柴幸男が作演出を手がけ、公募で集まった高校生たちが演じた「わたしの星」。当時の高校生は既に卒業しているため、新たにキャスト(ついでにスタッフも)を公募。〝2017年版〟ではなく、新しい「わたしの星」に生まれ変わった。

 

おそらく近未来。地球の気温上昇などが原因で、人々は火星に移住する。その一方で、過疎化が進む地球。人数も少なくなった高校では、生徒たちが文化祭の準備に明け暮れる。その夏休み最終日、スピカはヒナコに火星への移住と転校を告げる-。私にはなかったけれど、高校時代ならではの切なさやどうしようもない熱さ、かなうかどうかわからない未来への思いなど、いろいろな感情がぐしゃっとなって放出される作品。それを高校生が演じるのだから、初演を観ている一人として始まる前から「あの物語が始まるんだなぁ」と感慨深く思っていました。

 

2014年と2017年の違いは、キャストはもちろんのこと、舞台セットや脚本も変わっていました。14年はしっかりセットを組んだ一方で、17年は横長の素舞台を客席が挟む(役者の待機位置は舞台の上手と下手に置かれた椅子)。あと、17年は歌って踊るシーンが最後の方に集約されていたのと、「スピカ」が不在。火星からの転校生が一人二役で演じるけれど、声のみのシーンが多かった。

 

初演では姿を消したスピカを探しながら、それぞれの思いが交錯するシーンが大好きだった。今回もその場面はあって、舞台を駆け抜けては上手と下手の椅子(席)に座って楽器を演奏する、という演出に。その動きと演奏が秀逸過ぎて見とれてしまい、せりふまで気が回りませんでした。役設定では「ダメな兄貴」なケンジが、舞台を下りた瞬間、演奏のカウントを取る表情がカッコ良かったです。あと、近未来の設定なのに、舞台上に置いてあるのはカセットレコーダー。そういうところに哀愁を感じた大人も多かったと思います。

 

札幌でも高校生や小中学生を対象にした演劇ワークショップが行われています。が、演劇の〝地産地消〟ではなく、質の高い、国内で認められている人を招いた方が子供たちのためになるのでは-と常々思っているんですけどね。

 

・8月24日、東京・三鷹市芸術文化センター星のホール

text by マサコさん

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。