「ディスイズ人間」は伝わったけど  マイペース『ばかもののすべて』

父親の死をきっかけに、相続問題が巻き起こる和菓子屋の話。
舞台で何度も観てきた役者が勢揃いなことと、「ディスイズ人間、愛のコメディです。」というキャッチコピーに惹かれて観劇。

繰り返されるボケとツッコミ、出演者の間の取り方も抜群だし、一つひとつの言葉のチョイスも今時っぽい感じ。会場からも度々笑いの声が上がり、自分も楽しんで観ていたのだが、山場を体感しないまま物語は終わってしまった。

冗談のようなやり取りをしていたと思いきや急に感情を爆発させたり、シリアスなセリフを吐いたかと思えば誰かの思いつきでくだらない応酬が始まる。この落差が作品の中で必然的なものではなく、笑いを生むために用意されたギミックに思えてしまい、後半は笑いながらもなんだか冷静になってしまう自分がいた。「さっきひと笑いあって、ここで本心を言ったってことは、そろそろ話が動くかな?」と勝手な予想がチラチラと浮かび、肩すかしを食らったように感じてしまったのである。

ゲラゲラと笑える作品は個人的には好きだし、コメディとコントの違いについて自分は答えを持ち合わせていない。観終わったあと面白かったと思えればそれで充分なのだけど、今作は「結局、自分は何を観ていたんだろう?」という疑問が残る。

本編に漂う「ばかばかしさ」は、身近な人間の死に向き合えなかったり、大人になりきれない人間の弱さを確かに表現しているのかもしれない。Youtuber武田の「いいねえ!人間だ!」というセリフもふざけているように見えて、作品の本質を突いているようにも思える。こうした部分が演出の語る9割の余計なこと、1割の大事なことなのだろうけど、その1割を個人的にはもっと濃く描いてみてほしかった。若手の役者が多いものの、演技は全員抜群の安定感。ハッとするセリフや見応えのある場面もあっただけに、カッチリと作品にハマれなかったのが悔しい。
 
 
2017年11月13日(月)20時00分 コンカリーニョ

投稿者:取置デマチ

text by ゲスト投稿

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