好感の持てる舞台と試み 弦巻楽団#28 1/2 『リチャード三世』

リチャード三世について知ったのは、歴史ミステリの名作であるジョセフィン・ティの『時の娘』を読んだとき。その後、薔薇戦争をテーマにした小説や漫画のいくつかを読みはしたが、シェイクスピアの『リチャード三世』については「物語の展開と主要人物をおぼろに把握している」という程度の知識しかない。
だがなぜか「冒頭のリチャードのセリフが有名」ということは知っており、ちょっと楽しみにしていた。…ので、前王の語りからのスタートはちと残念ではあった。

弦巻楽団の演技研究講座の成果発表は前作『コリオレイナス』を観ており、早回しの演出と出演者の技量のばらつきは予想していた。が、本作の特に前半は、嘆きと怒りと陰謀の甘言の繰り返し。人が見えねば処刑すらもただの繰り返しに過ぎず、力ある出演者が不在の場面では舞台への集中を保てなかった。セリフを聞きながら、「イ」の段の特に「シ」の音、ラ行が続く「られる」やア音が続く「あなた」「やわらか」などの言葉は、聞き取りやすく語ることが難しいのだなぁ、などと考えていた。

しかしながら、みんな一生懸命に演じていて好感の持てる舞台ではあったのだ。
「いいなぁ!」と思ったのは、ヨーク王子(石川凜)の闊達さ。マーガレット(牧野桃花)の嘆きも雰囲気があった。リチャード(相馬日奈)がヘイスティングス(柳田裕美)に言いがかりの罪を着せる場面が好きだった。リッチモンド(鈴山あおい)は清廉な若者らしさが気持ちよかった。

それにしても。弦巻楽団の講座の取り組みはいろんな意味で興味深い良いチャレンジだと思っているが、作品(成果発表)と観客と価格の関係性については考えてしまうところがある。弦巻啓太という作り手の試みを継続的に応援している人や出演者の身内であれば、一般前売り2000円はサポート価格として高すぎることはないのだが。「講座の成果発表」と明記しているのだし、それ以外の観客は来ない前提なのかな。…いや、こんなことを考えるようでは小劇場演劇を観ることはできない、ということかも。
 
 
2017年11月25日14:00 サンピアザ劇場にて観劇

text by 瞑想子

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