女三人の10年 Org of A『ヴァニティーズ』

Org of A「ヴァニティーズ」をシアターZOOにて。高校最後の年から十年後までを描いた話。三人三様ではあるけど、ちょっとした違いに見えたものが、年を経ると全く違った生き方につながって行くのが面白い。出演陣が上手くハマっていたなぁ。関係ないけど鏡に客席が映るのが少し気になった。

幕間は化粧台前での着替えとメイク。タイトルを調べたら化粧台という意味らしいから必然の作りかも。しかし慣れているのだろうとはいえ着替えとメイクの速さよ。5年経ったと思わせるだけの変貌をしっかり見せてくれた。もちろん、そういう演技というのもあるんだろうけど。

A, B両キャストの違いは大枠では意外とそれほど多くは感じなかった。細かな動きや仕草なんかで捉え方の違いみたいなものはありそうだけど、印象が変わるまでは行っていない感じ。もちろん、いろんなキャストで演るのを観たくなる芝居であるのは間違いないのですが。

ひとりは50年代の道徳から抜け出てきたようで、もうひとりは当時の最先端を、もうひとりはその中間で計画的。性的なものについての話が中心ではあったけど、おそらくそれ以外についても同じようなものなんだろう。望むものは同じだとしても、価値観がかなり異る。

一幕目で起、二幕目で承、三幕目で一気に転結となるように見えるこの芝居は、やはり三幕目が面白い。学校生活という事で、ある程度の枠内での違いだったけど、その枠が取り払われた時に生き方の違いが思いっきり現れる。二人の言い合いに口を挟めない飛世さんもいい感じ。

三人の生き方は違うけど、結局は芝居には出てこない男たちに翻弄されているようにも見える。自分の描いた幻想の中に逃げてそれを認めようとしなかったり、それを冷笑したりしているけど。これから先も何かありそうな事を匂わせるに留めるあたりも余韻が残っていい感じ。

三幕目はみんな随分と変わってしまったように見えるけど、その萌芽はしっかりと一幕目で描かれているんですよね。こだわっている事が裏目に出たりはしているけど、それでもそこは変わっていないようだし。この先はどうなるのか。野次馬的に見るとさらに面白くなりそう。

全く関係ないけど、イレブンナインの澤田さんと上聰さんで、あっちこっち佐藤さんの大家さん役を思い出して、あの後あの歳になって再会したらどんなだろなんて想像してしまった。意外と第一幕みたいな感じの関係に戻っているのかもしれないななどと思ってしまうけど。

  • 2018/07/21 14:00/17:00
  • シアターZOO
  • 約1時間35分
公演日:

text by 小針幸弘

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