観て良かった、と心から思う 新篠津高等養護学校演劇部『よだかの夢』

本作を観るのは3回目だ。1回目は審査対象、2回目はただの外野、3回目はお金を払って-である。どの時の仕上がりが一番良かったかと聞かれると、迷うことなく観劇2回目の全道大会をあげるが、3回目は「卒業公演として」とても良かった。

※物語の詳細などは、新篠津高等養護のHP(http://www.shinko.hokkaido-c.ed.jp/?action=cabinet_action_main_download&block_id=395&room_id=1&cabinet_id=20&file_id=233&upload_id=899)をどうぞ。

で、何が良かったかというと、しっかりと高校生のラブストーリーになっていた点。石狩支部大会、全道大会ではラブストーリーの部分を描きつつも、高等養護に通う生徒の葛藤に主眼が置かれていた。また、いち観客としてぐうの音も出ないせりふが各所にあった。それを「うちらにしかできないことをやる」という同校演劇部のモットーとして評価するべきなのか、じゃあ他校がこの作品を上演した時に同じスタートラインに立てるのか…と周囲の意見は様々で、私も「演劇として良質な作品だけど、それは…」と考え込んでしまったのは事実である。でも、支部・全道を観た人たちの心を動かしたのは間違いないし、今でも「この作品は全国でどう評価されたかなぁ(=上演のチャンスがあったらなぁ)」と思っている。

話を戻して3回目の公演。物語にほんのわずかな引っかかりを起こしていたせりふや演技が修正され、約1時間の「ラブストーリー」に仕上がっていた。陸が明里に「よだかネックレス」(よだかグッズが売っていたという設定もすごいな、と)を渡す場面。1、2回目の時は「音葉でもいいんだけど」のようなせりふが、「特に意味はないんだけど」という意味合いのせりふに変わっていて明里の「ちょっとがっかり感」が伝わってきた。ラスト、陸の「(明里と)一緒にいたいんだ!!!」というせりふでは「言うなぁ」と、ほのぼのしてしまった。顧問の山田先生曰く、このせりふは陸役の岡村くんの意見で、卒業公演で初めて追加されたとのこと。そんな生徒の意見が作品に反映されてきたことを知り、昨夏からこの作品に関わってきた生徒たちも少しずつ変わってきたんだなと実感した。話を戻して、現実的に陸と明里の今後はどうなるか-と想像するのは野暮だろう。もっとも、そこに考えが至らずにハッピーエンドで幕が下りたのだけど。

本作を最前列で観て、生徒たちがなかなかカッコ良く、かわいいことにやっと気付いた(遅くてすみません)。ついでに演技の中で、結構細かな視線のやり取りが行われていることにも気付いた(審査員席は前の方がいいのかもしれません)。それらもひっくるめて、岩見沢まで観に行って良かった、と思う。

2019年3月17日、岩見沢・まなみーるで観劇

 

ものすごく細かいのですが、陸が言葉に詰まったり、言うか言わないか迷っている時、岡村くんが左のつま先をちょっと上げる仕草が、とてもステキでした。そして、そんな岡村くんが「ゲームのキャラクターに恋をしている」という意外性に驚きました。

追記:山田先生からメールをいただき、思わず「ギャルゲーとは」と調べた私である。

text by マサコさん

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