札幌のスピルバーグ? きっとろんどん『発光体』

終演後、カーテンコールでネタバレ禁止令が出たので、<ネタバレなし版>と<あり版>を書きます(ちなみに、そんなに厳しくなくてもいいんじゃないかと思いますが……)。

 

<ネタバレなし版>

きっとろんどん『発光体』。かなり、そうとう面白い。ハッキリ言ってこんな文章読んでないで観にいった方がいいレベル。そしたらみんな<ネタバレあり版>だけ読めばいいわけだから僕が2種類書く必要もなくなって万事解決……

とはいかないのでもう少し書くと、これはジャンルが持つ原初的感情・面白さがダダ漏れした怪作である。

序盤のストーリーはこうだ。オカルトブームに沸く世紀末、田舎の学校にやってくる美人でかわいい転校生。夏休みになり、彼女と親睦を深めるために肝試しが行われる。そうしてもちろん、事件が起こる。町と世界と彼ら彼女らの人生が変わる怪奇な事件が……。

物語のメインとなる199X年の肝試しシーンはすばらしい。どこまでも暗闇が広がるような、不安な夜がBLOCHに出現する。懐中電灯の灯りが心、もとなく揺れ動く。トランシーバーの緑色がぼんやり顔を照らして……どこからか虫の音色が聞こえだす。そのとき僕はたしかに、あるはずのない草むらの、夜のにおいを嗅いだ。

ノスタルジー、青春、オカルト、学園ホラー&ミステリー、SF、恋愛、友情……すべてがそこにあった。それらが一気に走りだし、面白さのうねりに巻き込まれると、あっという間に終演で2時間弱がたっている。タイムスリップだ!

ジャンルを知り尽くした優等生が再解釈して構築した……というよりも、好きなものが詰まったおもちゃ箱をひっくり返して遊びはじめたような、いい意味での幼児性・純粋さにスピルバーグを思い出した(褒めすぎ?)。

そこにガツガツ笑いが入ってきて、アクセントとなりテンポが生まれる。初日、客の呼吸も絶妙でいい舞台を作る一員となっていた。

舞台装置もよかった。BLOCHの狭さを感じさせない、むしろ広さすら感じる空間。舞台デザインは高村由紀子、舞台製作は高橋詳幸(アクトコール)。

そして照明(秋野良太[祇王舎])。真夜中、忍びこんだ教室に灯った蛍光灯の明かりを再現できるなんて。(点滅がつづくシーンはつらくて下を見ていたが……)

脚本・演出よし、役者よし、スタッフもよし。なるほど演劇シーズンのパンフに「今北海道で最も話題の若手ユニットなのではないかと自負している」と自ら書くだけのことはあった。

 

<ネタバレあり版>

というわけでネタバレありです。ここからは、観た人のみが読めます。観てもいないのに読む人は宇宙人に喰われます(早くもネタバレ)。

さて本作は、演劇のよさが前面に出た作品だった。映画ではできないことをやっている。宇宙人、あるいは宇宙人にボディスナッチされたものとおなじ空間にいる、という臨場感だ。

これはやばい。安全圏でスクリーンを見ている映画と違って、おなじ空間で数メートル、人によっては手が届く距離にそれがいるという本能的な恐怖。

もちろんそれはリンノスケ(きっとろんどん)と大森弥子(Takako Classical Ballet)の身体性が生みだす人ならぬもの、異形なるもののリアリティあってのことだ。

正直、七瀬ヒカリがボディスナッチされて以降、彼女の登場シーンは釘づけで、ほかのセリフが入ってこなかった。それくらいすごかった。

序盤、誇張された美人の転校生という偶像が宇宙人のおぞましくぎこちない動きに支配される。それが、ぞわぞわとした背徳感を生みだす。

いっぽうリンノスケの動きは舞踏的だ。大森演じる七瀬よりも先に肉体を手に入れ、人間生活に溶けこんでいた彼はヒトの体の操り方を楽しみだしているようにも見えた。

それに西野リョウタというキャラクターの、どこか、ここにいない感じ。最初、あきらかに田舎の中学生じゃない雰囲気で、なんだろう? と思っていたら、なるほどそういうことだったんだ。

彼が最後にとった行動は、そこだけ切りとってもSF作品たりえる題材。あの宇宙人にとって異性愛なのか同性愛なのかわからないけど……まあ、異星愛だったのかな?

観劇後、僕は劇場を出て寒い札幌の街をひとり歩いた。あのチープな急速冷凍機から数百年後目覚めた結城(塚本奈緒美[札幌FEDE])が、宇宙人が支配した地球で、生き残りのわずかな人類を束ねて戦う、安っぽくも最高な続編を想像しながら……。

 

公演場所:BLOCH

公演期間:2020年1月25日~2月1日

初出:札幌演劇シーズン2020冬「ゲキカン!」

text by 島崎町

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