マサコさんが観る 甲府南高校『スーパーリリックとマサコさんの帰還』

観た順番と感想が前後してしまうけど、手元に何も資料がない作品なので、忘れないうちに書く。

3月末の高校演劇・春フェスに続き、その数日後には、昨夏行われるはずだった高校演劇全国大会の代替上演会が豊橋市で行われた。広島市立商業高の黒瀬先生から、この高校演劇の〝はしご〟を「酔狂な世界です」とお知らせいただいたが、北九州しか行けなかった私にとって、「酔狂」さはうらやましい限りである。

それから日を置かずに、ネット上で「高校演劇オンラインフェス」が行われることを知った。何作か〝上演〟されたうち、私が観たのが山梨県立甲府南高校の『スーパーリリックとマサコさんの帰還』だ。このオンラインフェス以前に作品の存在を知っており、「何かの機会に観ることはできないかなぁ」と思っていたところ、「マサコさん」に出合う日が、やーーーーーーーっと来たのである。

メインの舞台は教室。7人の高校生が課題作文「10年後の私」について先生と話す。目指すことが決まっていなかったり、ユーチューバーになりたいと言ったり、生徒の思いは様々だ。このうち、留学から帰ってきて、(おそらく)他の人より1歳年上のマサコさんは「詩人になりたかった(なりたい)」と言う。時を経て、ホームカミングディで再会した彼らはどうなっているか|、というのがざっくりとしたあらすじ。

私がこの作品(舞台)から強く感じたのは「丁寧さ」。抑えめの火力でじっくり煮込み、灰汁を丁寧にすくい取ったスープのような感じ。いい意味で雑味のないところに、放送部の男子と女子のほほ笑ましい会話とか、詩人になりたいマサコさんと男子の「スーパーリリック」探しとか、ユーチューバーマサコさんのハイテンションなどがトッピングされ、その都度、味変が起きる。特に、放送部の2人の「あ」をめぐる会話とか、あの「間」は、うらやましいくらい素敵だった。

でも、私はどこか居心地の悪さを感じた。それは物語の前半で繰り広げられる、「10年後」に就いているだろう職業を「10年前」に定義すること。その理由はものすごく長くなるので省くが、私はこの物語の向こう側に、ある種の残酷さが見えた(そう思わない人の方が多いだろうことも、重々わかっている)。だから、このマサコさんの物語は現役の高校生よりも、高校時代を過ぎた大人に刺さったのではないか、と思っている。

マサコさんが探し求める「スーパーリリック」。ある意味、舞台上で彼らが発するセリフこそが、「スーパーリリック」なのではないか。もしくは、過ぎ去った、もう戻れない時に、その意味に、その重さに気が付くのが「スーパーリリック」なんだと思う。

4月11日、自宅パソコンで観劇

text by マサコさん

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