時間の浪費の輝き きまぐれポニーテール『King of Rock’n Roll』

ロックとは若さだと思う。比喩的にも。

それは、まだ火が通ってないのに、いいから喰えと出された料理のような。固い部分をバリバリ食うしかない。まだ野性味がたっぷり残ってる。えぐみもあるけれどけっこういける。ほかにはない味がクセになる。

きまぐれポニーテール『King of Rock’n Roll』。だらだら遊ぶことが唯一の活動といった謎の部活・貞球部(ていきゅうぶ)。その部室を舞台にしたパワフルでめちゃくちゃなお芝居だ。

いちおうストーリー的には、部室剥奪の危機をめぐる騒動があったり、複数の恋物語が展開されたり、折に触れ挿入される戦争をめぐるテレビ報道があったり、まあいろいろあるんだけど、ハッキリ言ってこの劇の面白さはそこではない。

物がみっちり詰めこまれ演技スペースあるの? と思ってしまう貞球部の部室で繰り広げられるその場その場のテンション、パッション、ノイズ、喧噪、罵詈雑言、それらを総体として「青春」と呼んでもいいかもしれないけど、そのくだらないなんの価値もない時間の浪費の輝きが最高だ。

男子高校生は粗野で未熟なやつらだ(僕もかつてそうだった)。完成されてないことだけが唯一の価値と言ってもいい。そんな、まだ固く、えぐみまである青春という味、ロックという刺激をよくぞここまで舞台化した。役者の個性、脚本の荒々しさを、躍動しキレのある演出がまとめあげたと思う。

役者はツインギターとでもいうべきふたり、ハシモト役の足立泰雅(劇団怪獣無法地帯)、チョーノ役の百餅がよかったし、終始ブレないムトウ役・岩波岳洋は低音担当のリズム隊か。ケンスキー役の長谷川健太はわちゃわちゃした脇役のようでもあるが、実のところ舞台を引っぱっていたのは彼で、僕にとってはボーカルだった。

この舞台はすべての役者がよく、全員の名前を挙げたいところだが最後にひとりあげるとしたらフジナミ先生役のサイトータツミチ。アクセントとして申し分なく、笑いもとれ、観ていて純粋に楽しかった。

さてこの舞台、単なる青春物に終わらず、終盤驚くべき展開が待っている。実のところ僕はその部分の効果については納得してないというか消化不良なのだけど、でも冒頭に書いたようにロックは固い部分のある粗野な味だ。この舞台もまたロックであるなら、この消化不良もむしろ狙いなのかもしれない。

でも僕は、あのあとの物語の方が気になるんだ。いま僕が観たいのはその部分なのかもしれない。ああなったあとの貞球部の様子。雰囲気はどうなんだろう。変わらないのだろうか。それでも彼らは、いつも通りバカを繰り返すロックな青春を送りつづけることができるのだろうか。

 

公演場所:BLOCH

公演期間:2021年7月31日~8月7日

初出:札幌演劇シーズン2021夏「ゲキカン!」

text by 島崎町

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