2022年度 記憶に残った作品 ー ラボチプロデュース・ぷらすのと☆えれき、ELEVEN NINES、劇団fireworks

島崎町が選んだ3作品
 
■『沼部、陸へ上がる』ラボチプロデュース ぷらすのと☆えれき

沼を愛する男3人、「沼部」。タレントのような人気を得た彼らは、解散して12年後に当時を振り返る、2人で。どうして1人いないのか、その理由は……。軽妙な3人芝居が楽しく、あっという間に世界に引き込まれる。過去と現在を行き来する構成も巧みで物語力の高さも感じた。演技、脚本、演出、照明、音響……すべてにおいて高水準で大満足。2022年度のお芝居でもっとも笑えた場面のある作品。(2022年11月3日~11月6日、シアターZOO)

 
■『ひかりごけ』ELEVEN NINES

知床を舞台にした人肉事件から着想した小説「ひかりごけ」。その舞台化。小説は変わった体裁で、著者が知床を訪れ事件を知る紀行文ふうの前半と、事件の場面を想像して戯曲にした後半に分かれる。舞台もその構成に則っているのだけど、さらにチャレンジをしていた。小説が実際に起きた事件とは異なっている点をふまえ脚色をしたり、登場人物に多層性を与えたりしていた。それらが不思議な奥行きを作り、事件の幻想性を深めていた。(2023年1月28日~2月4日、シアターZOO)

 
■『畳の上のシーラカンス』劇団fireworks

ひよどり荘301号室に引っ越してきた作家志望の青年は、前の住居人の女性と同居することになるのだが、この部屋には秘密があって……。昭和、平成、令和の時代をアパートの一室を中心に描くコメディ。過去、現在、未来を縦横無尽に描く物語力に魅せられた。笑いのテンポもよく、登場人物の奇天烈さも楽しい。何度も観たくなる舞台だし、何回観てもきっと楽しいんだろう。(2023年2月11日~18日、BLOCH)

text by 島崎町

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